6.06.2009

エカテリーナ二世

目黒の庭園美術館に、偉大な女帝の「デイナーセット」が、エルミタージュから、運ばれた。

●トルコとの戦勝を、プロイセン王から、祝う印(気持ちを表し好意を請う、かこつけて?)としてプレゼントされたもの。
白い磁器の肌は、如何ような図柄も引き受けられるので、記念のテーマを描かせて、贈答品とするのに適当。しかも、途方も無く高価なものだから(贈り物の)効果抜群。プロイセンは、領土問題を、宜しくお願いしたかったとか。
ロシア兵、トルコ兵、戦争の色々な場面が、綺麗に描かれている。クリーム器(ホイックプリーム用)も、小さな花瓶も、銘々用に揃えられていた。


●ピョートル大公(→ピョートル3世、1762)とゾフィー(→エカテリーナ)の結婚(1745)祝い、ザクセン王から。マイセン。
ロシアの守護神・聖アンドレイの十字架(X)が描かれている。磔られた人もリアルで、食欲を削がれそうだ (;´д`)


●1778年、かの有名な「女帝のポチョムキン」のために、注文された。ポンペイやヘラクレウムの再発見がセンセーショナルだったのだろう、バロックやロココが流行遅れになるほどの、「新古典主義」の隆盛。その趣味が込められている&セーブルの美しいブルー!
「1774年に即位したルイ16世と、新しく関係を結ぼうと、しゃれたお世辞でもあった」という解説が面白かった。卑近である。


●英国の「クイーンズ・ウェア」を名乗るウェッジウッドに依頼された。クリーム色地にセピアで墨絵(白描画)のように絵付けされたセット。英国の風景、建築物が、端正に表されていて、雅趣がある。英国趣味というものも、当時、一種の理想とされていたという。「セットの完成は、ウェッジウッドの名声を高めたばかりでなく、女帝の啓蒙君主としてもセンスを、全ヨーロッパに知らしめたのだった。」


●ロシアの最高位の勲章の一つ「聖ゲオルギー勲章」をモチーフとし、その受勲者たちのための宴に使われたセット。家の子たる将校、近衛兵たちを大切にしている、という印(気持ちを表し好意を繋ぐ?)。四角い金の勲章が、皿の真ん中に輝く。小さなカップの蓋の把手となる栗鼠が可愛い。メイド イン ロシア。


以上、5つを数えられるセットだが、展覧会の見出しは「四大ディナーセット」となっているのは何故?
トルコ戦勝祝いのセットは、「デザートセット」である(ディナーセットとなっていない)(^^;)
だから?ですかー


それぞれのセットが、800点、900点という量であるいるという。

数多の良く出来た人形たちも、目を引いた。

ロシア宮廷の、華麗なる御代は、時の流行に、力一杯、適合している。
クラスメートの中で、あっちを見、こっちに気を使う女学生のようだ。
抜かり無くトレンドを抑えて、リーダー格(^_^)v
田舎者の善良さと頑張りを見るような気もする。女帝は、西ヨーロッパの生活、衣食住、に憧れていた。
美意識や知性に近づく努力を怠らなかった。展覧会の5大セットは、女帝一代の稼ぎである。
ヨーロッパ諸国は、東洋の磁器に憧れて頑張ったのであったが。

何故、ヨーロッパは、あれぼど東洋磁器に執着を見せながら、長らく、
自ら制作することが出来なかったのか、不思議に思う。
「物」は入って来ていた。物を運ぶルートはあり、携る商人はいたのだから、
「作る人」を連れて着る(日本がやったように)、若しくは、自国の職人を、送り込んで、習得させる、ということは不可能だったのだろうか?
龍騎兵600名と龍紋の壷151個を取り替えたという話もある。(Dragon Vase)
それほどなのに、なぜ!

昔は、王侯にとっても贅沢なものであった。下々の者には、想像することも出来なかった磁器は、
今(気が付けば?!)ありふれたものになっている。
コンピューターというハイ・テクノロジーが、パソコンとなって、我が家にあっても、違和感のない時代になったことと、似ているかな?(^^;)