ホテル・レジーナ
題名について。
「昼顔」(Luis Buñuel監督 1967)、原題は「 Belle de Jour」これは、花の名前としてそのまま、"昼顔"のことだが、"Belle"は、美人のことも言う。jour=昼間。昼の美人。カトリーヌ・ドヌーヴが演じる23歳の、生活に不自由無い奥様が、自由に、秘密に、パートタイマーになれるのは、昼間だけだったことを、象徴し、これ以上の呼び名は無い。
反対語として?"Belle de nuit "は、花の名なら、"オシロイバナ"のこと。nuit は夜。夜の美人=娼婦を指す=プロの女性に対して、昼の美人はアマチュア、と言ったら良いのか(^^;)
昨年末公開された Manoel de Oliveira 監督の「夜顔」の、原題は(オシロイバナ、或は、娼婦の喩え” Belle de nuit” ではなく)「Belle toujours」、直訳すれば、「いつまでも、美しい」、「変らぬ美人」、とでも言う意味になる。(劇中、ユッソンがセブリーヌに、そう言う場面がある)日本語で「夜顔」としたのは、やはり、名高き「昼顔」の対として、更に、”オマージュ”として(に違いない)!。
前作「昼顔」では若妻の美貌、新作「夜顔」で、パリの街の豪華絢爛。豪華な表皮の下の、心理学的描写。
「夜顔」の後ろに、「昼顔」を透かしてみる。年月を経て、ミシェル・ピコリの老大成振りに、目を見張り、ドヌーヴは ビュル・オジエに変ったが、輝く金髪には、同じく=Toujours!目を奪われた。ジャンヌ・ダルクの黄金の像のよう!
日本人が演じることを想像してみる。
セブリーヌは、若尾文子なら結構かも(23歳と65歳で!)、夫ピエールは30歳くらいの三浦友和では如何?煮ても焼いても食えないようなユッソンにぴったりの人が、さっと思い浮かばない。知性も茶目っ気もあり、嫌らしい目つきのー
そして、あの時代とこの時代の Paris でなくては作れない映画だと思った。それを、イヤガウエにも掻立てる交響楽の美。(「昼顔」には、バックミュージックは、無かった、と思う)
謎は、謎めかせられたまま、映画は終わったが、真実というものは、目には見えないものだから、余韻に酔うことが出来れば、上出来の映画。
心は揺れ動く。
セブリーヌとユッソンの間には、関係は、無かったと、私は、解釈している。
或は、ユッソンが言うように、あったか?なかったか?「本当のことを言う」ことは、今や、重要ではない、のかも知れない。
無言で食事