8.06.2008

おいしさの秘密/ダシドルジムンフジャルガル

Ms. Munkhjargal DASHDORJ (モンゴル・アルバイト・食品販売員)
「おいし~い!」。日本のテレビを見ていると、この言葉をしょっちゅう耳にします。
私が日本に来て気づいたモンゴルとの違いの一つは、日本では、食べものについてのテレビ番組が、とても多いということでした。毎日、朝から夜中まで、あちこちのチャンネルで、いろいろな食べものを紹介しています。高級レストランのぜいたくな料理、日本のある土地の名物料理、まだあまり知られていないめずらしい食材を使った食べ物、健康によい食品、家庭での料理の作り方など、食べものについていろいろな情報を伝えてくれます。テレビの中の芸能人は、目の前に置いてある食べ物を一口食べた瞬間笑顔に変わって、幸せそうにこう言います。「おいし~い!」。テレビを見ている人たちも、それを見てうれしい気持ちになるんでしょうね。日本人はおいしいものを食べるのが大好きです。日本人のみなさんはきっと、食いしん坊なんでしょう?
食べる人が一所懸命ですから、作る人たちも同じように一所懸命です。味についていろいろ研究して、細かい技術を使って、おいしいものを作り出します。私たちモンゴル人は乳製品をよく食べます。ずっと昔から、ヨーグルト、チーズ、バター、お酒だって家畜のミルクから作ってきました。私は日本に来てからももちろん日本の乳製品を買って食べています。日本人が乳製品をよく食べるようになったのはそんなに昔のことではないと聞きました。でも今、日本の乳製品はとってもおいしいです。またある留学生は日本に来て、ペットボトルのお茶を飲んで「おいしいね」とすごく感動してましたよ。日本人のまじめで熱心な性格が、そうやってたくさんのおいしい食べものを作り出しているんでしょう。それに、日本の自然、特に、豊かな水がおいしいお米や野菜を育てているんだと私は思います。
また、忘れないでください。日本は外国からも、おいしいものをたくさん輸入している
んです。それはもちろんおいしいに決まっています。
以上、私は日本の食べもののおいしさの秘密を考えました。でも私の話はここで終わりではありません。もう少し続けて話したいと思います。
私は大食いという食べ方も日本のテレビで初めて知りました。おいしそうな、ぜいたくな食べものを大きな口を開けて、次々と食べていきます。食べものをできるだけたくさん食べる競争なんて、私は自分の目で見るまで考えたこともありませんでした。日本人は、世界のおいしいものを自由に手に入れることができるようになりましたから、次はそれを、たくさん、ほかの人よりもたくさん食べないと満足できないのでしょうか。
また、ゲームで負けた人に、青汁やすっぱい果物をむりやり飲ませて、その苦しそうな様子を見て、みんなで笑っている番組も見たことがあります。食べたくない人になんでむりやり食べさせる必要があるのでしょうか。
それから私は次のような話も聞きました。ある外国人が日本人に自分の国のチョコレートをおみやげにあげたそうです。もらった日本人はそれをちょっと食べて、まずいと思ったんですね、そのまま捨ててしまいました。そして、あれはまずいチョコだったなぁと人に言ったそうです。その外国人はあとで偶然それを知って、ショックを受けていました。
そのチョコは日本のものと比べたら技術はよくなかったかもしれません。でもプレゼントする人の心がこもったチョコだったんです。食べものにはこういう「おいしさ」もあるんじゃないですか?
今、日本にはおいしいものがたくさんあって、お金さえ出せば、いつでもそういうものを食べられます。食いしんぼうのみなさんは、お腹をすかせるひまもないでしょう。でも、いつもいつもおいしいものばかり食べ続けていたら、本当のおいしさも、食べものの大切さも、分からなくなってしまうかもしれません。それに、本当においしい食べものというのは技術だけでは作れないものだと思います。私は日本に来て、テレビを見ながらそんなことを考えました。ですから私は、今日、みなさんにそれを伝えたかったんです。
実は、私も食いしんぼうなんですよ。それで私も、できるだけたくさん、この日本語を使っていきたいです。「いただきま~す・・・・・・おいし~い!」。
ご清聴ありがとうございました。